自宅サーバー

定年退職して時間の余裕が出来ました。丁度その頃 ADSL が我が家にも開通したことで、隠居のオモチャとして自宅サーバーを運用してみたいと考えました。我武者羅にLinux サーバーを立ち上げて1年程運用してみた結果、サーバー管理は楽しいけれど面倒なことも多いので隠居向きではないと判断してレンタルサーバーに切り換えました。

はじめてのRedHat-Linux7.2

Linux 事始め
サーバーを公開するに当たり、Linux と Windows 2000 Server を比較、費用を抑えるためオープンシステムの Linux  を使うことにしました。但し、 Linux  には沢山のディストリビューションがあります。比較する目的で、PC誌の付録CDに収録された Vine Linux 、Turbolinux、及びRed Hat Linux をインストールしてみました。その結果、大きな差はなさそうだったので、書店のLinux コーナーで関連書籍が圧倒的に多いRed Hat Linux 7.2 を選択しました。

とは言え初めてなので、入門書を片手に Linux の勉強から始めました。使った入門書は「はじめての RedHat Linux7.2 」です。Linux は以前にも雑誌の付録に付いていた CD からインストールを試みたことはあったのですが、サーバー構築などハッキリした目的が無かったので、インストールして幾つかコマンド操作するところまでで息切れしてしまい、その先に進めませんでした。

 

ADSLによるサーバー構築ガイド

久しぶりの Linux は GUI インストールになっていて Windows 並の容易さで、初心者でも呆気なく終わりました。これなら息切れせずに先に進めると思ったのですが、インストール後の各種設定は、 Linux に慣れていない 初心者には結構面倒な作業でした。なかなかうまく行かないので苦し紛れに追加購入したのが左に載せた「インターネットサーバー構築ガイド」です。

勿論、上に載せた「はじめての —–」だけでもサーバーの構築は出来るのですが、タイトルに添えられた ADSL の惹句につられて購入しました。解説書はそれぞれの著者によって多少内容に違いが出てきます。こちらの記述は具体的で分かり易く、上にあげた「はじめての —–」の記述を補完する部分もあって、設定経験の不足な小生には非常に有効でした。

 

 

◆自宅サーバーの準備
使用するLinux ディストリビューションが決まったので、ターゲットマシン、LAN 構成、サーバー機能を検討しました。サーバーに使用するパソコンはマイクロATX で組むことにしました。当時、既に10台くらい自作しているので、余ったパーツも有り、手持ちのパーツの中からケース、マザーボード、CPU、SDRAMを選択しました。自作11号機です。

問題はIPアドレスとドメインです。無料のダイナミックDNS の利用も考えたのですが、メールサーバーの運用を考慮して、DHISサービスを利用することにしました。DHIS なら自宅サーバーがダウンした場合に再稼働までメールを保存してくれるので、若葉マークのサーバー管理者向きと考えたのです。固定IPアドレス(特定のIPアドレスにホスト名を結びつけて使用する専用線契約)が理想ですが、当時は未だ高額で隠居のオモチャには使えませんでした。

●DHISサービス
自宅サーバーの運用には、ポートサイドネットと言う会社のDHISサービスを利用しました。DHISサービスは2002年2月から2003年2月まで、1年間利用しました。当初は隠居のオモチャだったLinuxサーバーも段々メンテナンスが負担になってきました。丁度、国内にも安価なレンタルサーバーが普及し始めた頃で、待ってましたとばかりレンタルサーバーに切り換えることにしました。

DHISサービス

◆自宅サーバーの立ち上げ
取り敢えずPentium Ⅲ1GHzを搭載した自作11号機に、Red Hat Linux 7.2をインストールしました。各サーバー 機能を確認後に、DHISのクライアントプログラムをインストールして、インターネットとの接続状況を調べたのですが、DHISの設定は英文の簡単解説しかなく、Linux 以上に戸惑いました。何とか設定を終わり、以前の職場の人とメールの送受信を行い特に問題の無いことを確認しました。

LAN内でWebサーバーにアクセスしての動作確認は簡単ですが、WAN側からWebサーバーへアクセスした場合の動作確認は、退職前なら仕事場からアクセス出来たのですが、隠居生活ではそれが出来ないので一寸面倒でした。以前に使っていたモデムカードを引っ張り出し、LAN内のPCからモデム接続で一旦WAN側に出てWebサーバーにアクセスする方法で動作を確認しました。

Sambaサーバーの稼働に躓きました。Sambaサーバーへのアクセスが出来ないのです。Sambaサーバーの予備テストでは横着をして手近にあったTurbo Linux機を使って動作確認したのですが、Turbo Linuxでは何の問題もありませんでした。ところが、本番のRed Hat Linux 7.2 では接続できないのです。この解決には時間がかかりました。原因は両OSのデフォルトのセキュリティ設定が違っているためで、Turbo Linuxの方が緩かったのです。

Linuxのバージョンアップ時のトラブル
●液晶ディスプレイの誤認識
2002年の9月末に8.0にバージョンアップされましたが、11月発行の雑誌の付録には未だ収録されていませんでした。待ちきれず11月末にミラーサイトからダウンロードしました。バージョン7のインストールではトラブル無しだったのですが、今回は一寸躓きました。古い液晶ディスプレイが型式を誤認識されて、それ以降画面表示が出なくなりました。 初心者にはハードルが高いトラブルで正直困りました。

CDブート直後の「boot:」プロンプトの段階で、解像度等を入力する方法があるらしいと推測したのですが、英語のドキュメントを読むのが面倒だったので、手近にあった別の液晶ディスプレイを接続して見ました。こちらは型式が認識出来ず一般的ディスプレイとして扱われたのが幸いして画面表示は問題なく、インストールは無事終了しました。インストール終了後、誤認識されたディスプレイに繋ぎ換えたところ問題無く稼働しました。

なお、アップデートインストールの積もりで始めたのですが、インストールの序でにHDD の構成を変えたことが原因で、インストールが途中で止まってしまいました。HDD の構成を元に戻すのは大変なので、クリーンインストールに切り替えました。Red Hat Linux 7  の時は初めてなので大部分のパッケージをインストールしたのですが、今回は出来るだけ余計なものをインストールしないようにしました。

UNIX_user_2002年12月号

●コンパイルエラー
インストールの際、X環境だけ追加選択し 、ソフトウェア開発を追加選択しなかったのですが、これが二つ目の躓きとなりました。無事 Red Hat Linux 8.0 のインストールが終わり、 各種設定も済んだ段階で、ポートサイドネット(ダイナミック DNS プロバイダー)から提供されたクライアントソフトをインストールする際、コンパイルエラーが起こったのです。原因はコンパイル関連のパッケージの不足でしたが、原因に気が付くのに手間取りました。

Red Hat Linux 7  のインストールでは偶然にも条件が整って、そのうえ解説書の手順から逸れないようにインストールを進めたので何のトラブルも無く済んだのですが、段々慣れてきて独自色を出そうとして躓いたと言うのが真相です。しかし、上のような躓きがあった方が、色々と勉強になることは確かです。

新しいシステムが稼働した頃、UNIX誌に最初の解説記事が掲載されました。詳細な解説で、自作12号機の製作では大変参考になりました。特に、WevDAV は FTP より便利なのを実感しました。

◆サーバーの設定
サーバー設定の概略を下表に示します。ルータでは、DHCP とIP マスカレード機能を設定していますが、Linuxサーバー側では不要なので設定していません。パケットフィルタリング機能はルータと Linux サーバー側でそれぞれの用途に合わせて設定しています。

Red Hat Linux 8.0 サーバーの設定
serzer2

Linuxでパソコンをルーターに

DNSとWebの設定は、X環境で設定ツールを使って行いました。出来上がった設定ファイルを一部修正しましたが 、viエディターよりは可成り楽になったと感じました。 セキュリティーは設定ツールで「高」を選択し、必要なポートの開放を追加しました。メール関連はエディターで設定ファイルを修正しました。セキュリティの設定は暫く運用した後に見直しています。

redhat-config-securitylevel での設定は簡単で実用上も問題ないですが、きめ細かい設定をするにはiptables の書き直しが必要でした。適当な参考書が無かったので、右のPC版ルータ解説書を参考にしました。自宅サーバー用のiptables を作成するには、第5章のiptables とパケットフィルタリングが参考になりました。

 

◆自宅サーバーの運用
運用を始めて分かったのですが、Red Hat Linux は半年毎にバージョンアップがあるので、管理者としてはバージョンアップのためのメンテナンスに追われているような感じで、落ち着けませんでした。バージョン8.0になった時、長期使用を考えて、コンパクトなキューブ型ケースを使った小形静音システムに切り替えました。

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自宅サーバーの変遷

バージョン9がリリースされた頃、雑誌で安いレンタルサーバーを知り、Linuxサーバーの勉強も大体出来たのでソロソロ潮時かと思い、運用中の静音シス テムに未練を残しながら2003年2月にレンタルサーバーに切り替えました。それから10年以上が経過、加齢による脳の退化もあって、苦労して習得した Linux は記憶の奥底に沈んでしまい遠い存在になりました。