Intel Raptor Lake CPUの劣化問題

最近、インテルの13世代・14世代のRaptor Lakeデスクトッププロセッサーに関する不具合情報が世間を騒がせています。8月に入ってマザーボード各社がIntelの対策パッチ(0x129)をあてたBIOSを公開しました。ASUSのサイトを覗くと、我が自作PCのマザーボード「ROG STRIX Z790-F GAMING WIFI」の最新BIOS2503が公開されていました。

◆インテルの不具合対応
前代未聞の品質問題に対するIntelの対応はスッキリしませんでしたが、漸く不具合原因がCPU本体にあることを認め、その対策として、①マイクロコードの修正と、②保証期間の2年間延長を発表しました。

★マイクロコードの修正(BIOSアップデート)
インテルは問題のあるマイクロコードを修正するパッチを準備し「完全な検証を行った後、8月にパートナーに対しパッチのリリースを予定している」と公表、実際に8月に入って、マザーボードメーカーは対策パッチ(0x129)をあてたBIOSを公開しました。下図に示すように小生が使っているASUSのROG STRIX Z790-F GAMING WIFIでも最新BIOS2503が公開されていました。

ASUSダウンロードセンターBIOS 2503(クリックで拡大)

早速ダウンロードしたのですが、ことが BIOSの更新なので一寸躊躇して2~3日放置してました。ユーチューブ動画で日頃よく見かけるPCオジサンが「正直、自分もよく分からないが、この不具合が原因で《不可逆的な劣化》が進行するようなので、BIOSは更新した方が良いと思う。」と発言しているのを見て、思い切ってBIOSを0816から2503に更新しました。

BIOS更新(クリックで拡大)

★Intel Default Settings
劣化問題に対するIntelの対策パッチ(0x129)をあてた我がマザーボードのBIOS(下図)を見ると、Performance Preferences の項目に Intel Default SettingsとASUS Advanced OC Profileの選択肢があり、デフォルトは安定性重視の「 Intel Default Settings 」になっています。もう一つの選択肢「ASUS Advanced OC Profile」はオーバークロック用と思われるので、ここはIntel Default Settingsとしました。

更にその下に Intel Default Settings と言う項目がありますが、こちらはIntel Default Settings における電力制限の設定です。選択肢はPerformance(安定性重視の控えめな設定)とExtreme(最大限のパフォーマンスを引き出す設定)があります。こちらは Extreme がデフォルトだったのでそのままにしました。因みにPerformance の電力制限は PL1=125W、PL2=188W で、Extreme の電力制限は PL1=125W、PL2=253Wです。BIOS更新後の状態は上の図で分かりますが、Extreme でも更新前に比べてCPU電圧が0.1V近く下がっておりCPU温度も低下しています。

Ai-Tweaker の設定(クリックで拡大)

★保証期間の2年間延長
CPUの保証期間が2年間延長と聞いても、我がCPUの保証期限が何年の何月何日になるのかピンと来ないので、Intelのサイトにアクセスして調べたみました。
サポートのページにログインすると「保証に関する情報」と言うページがあり、シリアルナンバー等の必要な情報を入力すると「推定保証期限 2027/12/20(最新)」と表示されました。(下図)
これを見ると期限まで3年数ヶ月あるので一安心です。小生、自作歴30年で約30個のCPUを購入していますが、CPUの不具合に遭遇した経験が無く、Intel CPUの保証期間が3年と言うことを、このサイトにアクセスして初めて知りました。てっきり1年と思っていたのです。5年使った25号機は例外的存在で、他は新CPUが登場する度に更新していたのです。

 

保証に関する情報(クリックで拡大)

 

◆BIOS更新前後のPC起動画面
今回のBIOS更新で一番驚いたのはスプラッシュ画面の変化でした。何時から変わったのか分かりませんが、初めて真っ赤なロゴを見たときはBIOS更新に失敗したのかと思いました。なお、以前の起動画面では「Please press DEL or F2 to enter UEFI BIOS」の文字が大きく、慣れるまで違和感があったのですが、今度の起動画面では「DEL or F2: Enter the BIOS settings」の表示が一寸弱々しく感じられます。

PC起動画面(クリックで拡大)

◆Cinebench R23 比較
Intel Default Settings は安定性重視なので、CPUの性能が落ちているのではないか?と思い、ベンチマークCinebench R23を走らせ、BIOS更新前後のスコアを比較してみました。更新前のスコアは27号機を自作した時に測定したもので「マルチが36971 pnt、シングルが2227 pnt」でした。Webでは40000前後のスコアが報告されていますが、我がPCは空冷なので「こんなものかな」と思っていました。更新後のスコアは
マルチが34279 pts、シングルが2175 pnt」なので、マルチが7.3%落ち、シングルが2.3%落ちでした。この結果をCPUの劣化と見るか、Intel Default Settings の設定条件のためと見るか判断が難しいです。

旧BIOSと新BIOS比較(クリックで拡大)

◆メモリーオーバークロック
BIOS2503の画像を見ていて、メモリーの周波数が定格の4800MHzなのに気がつき、オーバークロックをしたらどうなるか気になったので試してみました。BIOS画面で、D.O.C.P.の項目をDisabledからEnableに変更してBIOSから抜け出したところでブルースクリーンが発生しました。戸惑っている内に自動で再起動してWindows 11 が起動しました。そこでCinebenchを開始、無事マルチが完了したのでヤレヤレと思ったのですが、シングルの測定に移る直前にPCはフリーズ、暫くしてブラック画面になってしまいました。
そのまま暫く待つとWindows 11 が復活したので、気を取り直してメモリーオーバークロック時のCinebenchを開始、今度はマルチとシングルを完了しました。メモリーオーバークロック時のトラブル経過は下図の通りです。

Cinebench測定経過(クリックで拡大)

Windows 11 復活後、Cinebenchを再開、今度はマルチとシングルを完了(下図の左側画像)しました。結果は33000台で、メモリー定格周波数のスコア(23日と27日測定)の34000台に僅かに及びませんでした。この結果からオーバークロックは効果無しと判断し、オーバークロックの設定を解除して定格周波数に戻しました。

メモリーOC時と定格時のCinebenchスコア(クリックで拡大)
 

◆我がCPU劣化状況の検証
メモリーのオーバークロックで発生したブラック画面は、今年に入って、IllustratorやPhotoshopを使っている時に偶に遭遇していました。暫く待つと回復するので騙し騙し使っていましたが、我がCPUも劣化している疑いがあります。最近、海外のYouTuberがWebに載せた「ユーザー自身でCPUが不安定化しているかどうかを確認する方法」を試してみました。

1)BIOSをアップデートして、Intel Default Settings を設定。(これは既に済んでいます。)
2)最新のNVIDIA GeForceドライバーをダウンロードして、インストールを10回試してみました。
3)結果は下図で、4回目と9回目に失敗しています。ウーン!我がCPUは劣化をしているようです。

ドライバー10回インストール結果(クリックで拡大)

【結論】
既に書いたように、小生、今年に入ってIllustratorやPhotoshopを使っている時に何度かフリーズとブラック画面に遭遇していました。Intel CPU の劣化問題を知って「原因はこれかな?」と思ったのですが、劣化そのものが目に見えるわけではないので判断に迷っていました。上の結果を見ると、残念ながら我がCPUは劣化しているようです。取り敢えずIntel Default Settings の設定で劣化の進行は抑えられており、保証期間延長措置で我がCPUの保証期限は2027年の末まで延びいるので、交換申込に時間的余裕が出来ました。
上の検証結果でIntelがCPU交換に応じるかどうかは不明ですが、代替機(遊休状態の25号機)を整備して、CPUの交換を申し込むことにします。