初めて買ったカメラ

1976年5月から西ドイツへ長期出張することになり、この機会にカメラを買ってヨーロッパの景色を撮ってこようと思った。サラリーマンになって収入はあったが、生来のケチな性分から購入機種の決定は難航した。と言っても、頭の中で「アレにしようか、コレにしようか」と迷っているだけだった。何しろ初めてなので値段や性能や使い勝手について自分なりの判断が出来なかった。

海外出張の前は事前準備の課題が多く、カメラの機種決定は優先順位の低い課題だったが、雑誌でAE-14月に発売されると言う記事を見て、4月発売なら何とか間に合うと思い、即「これにしよう」と決めた。ところが、発売直後に横浜市内のカメラ屋さんに行ったところ現品が無く買えなかった。当時は未だ量販店など無く、何軒かのカメラ屋さんを覗いただけだったが、人気商品で品薄だったようだ。

手に入らないと分かると益々欲しくなった。工業製品なので待っていれば手に入る筈だが、小生の場合は5月下旬に海外へ出掛けるので焦った。インターネットなど無い時代なので、会社の帰りに市内のカメラ屋さんに何度か足を運んで確認するしかなかった。そんな中、某店の店員がコッソリ「西口のKカメラにある。」と教えてくれた。K店を訪ねると現品があった。値引き交渉もソコソコに、と言うか多分向こうの言い値で購入したと思う。

初めて買ったカメラ
初めて買ったカメラ

雑誌の記事で、キヤノンAE-1が世界初のマイクロコンピュータ(テキサス・インスツルメンツ社製4ビットCPU)を内蔵したAE一眼レフカメラと知り、マイクロコンピュータを生産ラインに導入する仕事を始めたばかりの自分にピッタリと思った。更に、部品の電子化、ユニット化と自動組み立ての導入で、大量生産が可能となり、他社より2万円近く安かったのが決め手になり、AE-1が初めてのカメラになった。

初めて買ったカメラAE-1は「誰でも失敗なく撮影が出来てコストパフォーマンスも高い」と言うキャッチコピー通りに、小生のドイツ滞在中故障無しで大活躍してくれたが、帰国後は小生の写真熱も冷めて押し入れで眠ることになってしまった。保管状態が悪かったのか、次に出番が回ってきたメキシコ出張では肝心の露出に狂いが出て、念のために持参したミノルタのバカチョンカメラの後塵を拝することになった。

90年代中頃、京セラのコンタックスGⅠ、その後買い換えてGⅡを入手したが、その頃になると海外出張では、撮影は同行の若手社員に任せたので、我がカメラの出番は無く、一度だけエライさんのお供でシンガポールとマレーシアに出張した際、GⅡを使っただけだった。35年間、洋光台の押し入れの中で隠居生活を続けたAE-1は、我が古稀の引っ越しで洋光台から紅葉ヶ丘に移る際、ガラクタとして処分したので今は思い出だけが残っている。